特許法 102条(e)

今日は、米国特許法の102条(e)を纏めてみます。自分自身への備忘録を兼ねています。USPTOの条文リンクはこちらです。

(e)  the invention was described in -

(1) an application for patent, published under section 122(b), by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent or

(2) a patent granted on an application for patent by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent,

except that an international application filed under the treaty defined in section 351(a) shall have the effects for the purposes of this subsection of an application filed in the United States only if the international application designated the United States and was published under Article 21(2) of such treaty in the English language; or

和訳すると以下となります。

(e)発明が以下に記載されている場合、

(1)当該発明の日前に米国に出願され、122条の規定により出願公開された特許出願か、または

(2)当該発明の日前に米国に出願され、特許権が付与された特許出願であること。

但し、351条に規定された国際特許出願で米国を指定国とし、かつArticle21(2)に基づき英語で出願公開されたものに限り、この項に記載された効果を有する。

102条(e) は29条の2の拡大先願と似ているように思いますが、日本国と違い、本願の判断基準は「出願時」ではなく「発明日」だそうです。文言上は「日単位」であることは何ら明示されていませんが、判例または通説により日単位で運用する事となっているようです。詳しくはMPEPに記載があるのかな。

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102条(B)

米国特許法102条(B)は、パリ条約4条C(3)のケースでは、同4条Bに違反するのではないかと書いたのですが、MPEP§2133に次の記載を見つけました。

THE 1-YEAR GRACE PERIOD IS EXTENDED TO THE NEXT WORKING DAY IF IT WOULD OTHERWISE END ON A HOLIDAY OR WEEKEND

Publications, patents, public uses and sales must occur "more than one year prior to the date of application for patent in the United States" in order to bar a patent under 35 U.S.C. 102(b). However, applicant's own activity will not bar a patent if the 1-year grace period expires on a Saturday, Sunday, or Federal holiday and the application's U.S. filing date is the next succeeding business day. Ex parte Olah, 131 USPQ 41 (Bd. App. 1960). Despite changes to  37 CFR 1.6(a)(2) and 1.10 which require the PTO to accord a filing date to an application as of the date of deposit as "Express Mail" with the U.S. Postal Service in accordance with 37 CFR 1.10 (e.g., a Saturday filing date), the rule changes do not affect applicant"s concurrent right to defer the filing of an application until the next business day when the last day for "taking any action" falls on a Saturday, Sunday, or a Federal holiday (e.g., the last day of the 1-year grace period falls on a Saturday).

下線部を訳すと次のような意味です。

しかし、1年間のGRACE PERIODが土曜、月曜又は国民の祝日に満了し、特許出願の米国出願日が次の官庁の開庁日となる場合には、本条(102条(B))は適用しない。

流石に、米国特許法の初学者でも気づくパリ条約の抵触は、ちゃんと手当てしてあり抵触しないよう運用されていますね。しかし、条文に反映させずにMPEP(審査基準)で対処しているのが何ともアメリカンなアバウトさです。

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Patent Bar

 タイトルに記載した「Patent Bar」とは米国特許庁がおこなうPatent Agent 資格試験です。
 先週、受講した米国特許法セミナーの宿題が「Patent Barからの出題」ということで、ちょっとハードでした。出題された部分は弁理士試験の短答とほぼ同じ内容ですね。5択問題ということは共通していますが、出題傾向はちょっと違います。
 なかでも特に面白いと思ったのが第8問目でした。ちょっと概要を紹介します。
 「特許出願の請求の範囲は、要件が(1)から(5)から構成されています。しかし、拒絶査定により2年前に発行された先願特許公報には要件(1)から(4)までが記載されています。このとき審査官は法102条(B) (日本国特許法29条1項3号相当) で拒絶理由を通知しました。これに対する抗弁として最も適切なものを挙げてください。」
 自分は上記の問題は実務に沿っており面白いと思いました。日本国の弁理士試験でもこれに類する問題を出していただきたく思います。

 

以下に法102条(B)を引用します。自分自身の纏めを兼ねています。

A person shall be entitled to a patent unless
・・・・
(b) the invention was patented or described in a printed publication in this or a foreign country or in public use or on sale in this country, more than one year prior to the date of the application for patent in the United States,

 主文は29条1項柱書相当ですが、「産業上利用できる発明」「特許を受ける権利」の概念は記載されていません。
 (a)-(g)には、特許を受けることができない項目が列挙されており、29条1項各号に相当します。米国では先発明主義をとるため、特許を受けることができない要件が極めて複雑となっています。この中で、(b)項の要件が明確で利用性に富むため、実務上も重要なものです。以下直訳します。

(b)米国出願日の1年前以前に、
その発明が我国又は外国に於いて既に特許されているか、
または我国又は外国における刊行物に記載されているか、
または我国において使用又は譲渡されている場合。

 ここで言う「米国出願日」とは米国における現実の出願の日をいい、優先日のことではありません。 「米国出願の1年前以上」とは、あたかも日本に於ける新規性喪失例外(特30条)に相当するものと考えることもできます。いわゆる GRACE PERIOD です。
 最初の要件は日本国特許法39条1項に相当し、2番目の要件は29条1項3号に相当し、3番目の要件は同2号に相当します。
 先発明主義を採用する米国に於いては、新規性の要件は「発明日」を基準とする極めて複雑かつ法的安定性に欠ける条文ばかりですが、この102条(B)のみは「米国出願日」という動かしがたい基準を採用しています。よって、他社特許を無効化する際など、公知文献調査する日付の基準として「米国出願日の1年以上前」の基準が採用されています。

 余談ですが、パリ優先権が先の出願の日から1年以上経過しても有効である場合があります。以下条文が根拠となります。

パリ条約4条 C
(3)優先期間は、その末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受理するために開いていない日に当たるときは、その日の後の最初の就業日まで延長される。

 よって、パリ条約4条C(3)に該当する場合で、かつ先の出願をおこなったパリ同盟国で1年以内に特許査定された場合には、米国特許出願は102条(B)を根拠に拒絶されます。よって、法102条(B)はパリ4条Bに違反すると解されます。
 まあ、国内特許出願のみ非公開の請求ができるという、パリ条約の内外人平等の原則を軽く踏みにじっている米国ですから、上記のような問題点など気にも留めていないのかもしれませんね。

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米国特許法

 本日は都心にて米国特許法のセミナーを受講してきました。これで5回目くらいかな。
 米国特許商標庁(USPTO [ユーエスピーティーオー] と言うとかっこいいですね)に、日本語で出願ができます。これは日本国特許庁に英語で外国語書面出願できるのと同様です。しかし、日本国特許庁では「誤訳訂正書」をつかって、翻訳の誤りを訂正できるのに対して、米国ではそれに対応する制度がなく、翻訳文の範囲を逸脱する補正は新規事項の追加(New Matter)にあたるところが相違します。
 そういえば、外国語書面出願の趣旨について口述で問われたことがありましたね。パリ条約の優先権をつかって翻訳文を出願する事と外国語書面出願との相違点は、翻訳に誤りがあった場合であっても誤訳訂正書で救済されるという点が相違するのですが、その点に気づかずに答えに詰まると「C判定」となるという厳しい問題でした。

 今日は、米国特許法の「継続性のある出願」について学んできました。スペルは Continuing Application でよかったかな。種類は次の3つです。
 ①分割出願 (Divisional Application)
  いわゆる日本の分割出願と同じですが、自発分割は認められていない点が相違します。
 ②継続出願 (continuation application)
  再度、同一内容を審査をしてもらう出願をいいます。日本では対応する制度はありません。
 ③一部継続出願 (continuation in Part : CIP)
  上記の継続出願に、新たな発明を付加しておこなう出願をいいます。但し、付加された新たな発明に関しては原出願時の利益を享受できません。
 なんだか日本の国内優先権制度のようですが、こちらは出願日が遡及するようですので法的には違いがあります。
 上記3つの継続性のある出願(Continuing Application) は、いずれも原則として原出願時の遡及功を有します。
 米国特許法もちゃんと勉強しないといけませんね。まだまだ用語が耳慣れないものばかりです。MPEP (日本の審査基準に相当?)を読みこなさないと駄目かな。

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