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初音ミクと著作権について

初音ミクと著作権について書かれているサイトをご紹介します。

(1)初音ミク 著作権を根底から脅かす恐ろしい娘

(2)初音ミク」と著作権法

(3)ピリ辛著作権相談室:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

これらの意見を見て色々と考えさせられました。
ニコニコ動画にアップロードされている「初音ミクが歌うXXXXX」とは、果たして実演の固定物なのか。実演だとしたらその主体は誰なのか。実演家の権利は発生しているのか。初音ミクが既成曲を歌った場合には、誰の権利を侵害することになるのか、侵害の主体は誰なのか。
これらを法的に検討してみます。

◆初音ミクによる楽曲は実演の固定物なのか?

まず(1)と(2)のサイトで触れられている「歌唱権」ですが、著作権法には法定されておらず、産業界にて暗黙のうちに運用されている用語のようです。著作権法上、歌唱は2条1項3号「実演」で定義されている行為に包含されます。

著作権法

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

著作権法上の「実演」は例示列挙されており、自然人が歌うことのみならず、その他の方法により演ずることを含むとされています。初音ミクが歌うことのみならず、ソフトウエアの「初音ミク」に対して音声および音階を入力する作業を実演の対象として考えるとよいかと思います。自分は、初音ミクが歌をWAVファイルに出力することが「歌う」に該当するかは判断できませんが、少なくとも初音ミクのピアノロール・エディタに音階、歌詞若しくはイフェクトを打ち込む作業は「その他の方法により演ずること」に含まれると解します。よって、初音ミクによる楽曲は実演の固定物であると判断します。
ただ、これは疑義あると思いますので、明確に法定されることが望ましいとおもいます。

なお、藤田咲さんが「初音ミク」の声の素材データを提供する行為は、50音を様々な音階で読み上げる事であると聞いております。この行為は「演劇的に歌い」の要件を満たさず、ここでいう実演には該当しないと介されます。

◆初音ミクの実演の主体は誰なのか?実演家の権利は発生しているのか?

歌唱の主体は実演家であり、次のように定義されています。

著作権法
第二条    この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。  

 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。 

つまり、歌手がコンピュータによるプログラムであり、権利能力を有する自然人に該当しないとしても。そのコンピュータを用いて「その他実演を行う者」または「実演を指揮し、又は演出する者」が自然人若しくは法人であるならば、その者が実演家と解され、実演家に認められている以下の権利が発生していると解します。

①氏名表示権(著作権法90条の2)
②同一性保持権(著作権法90条の3)
③録音及び録画権(著作権法91条)
④放送権及び有線放送権(著作権法92条)
⑤送信可能化権(著作権法92条の2)
⑥放送のための固定(著作権法93条)
⑦放送のための固定物等による放送(著作権法94条)
⑧商業用レコードの二次利用(著作権法95条)
⑨譲渡権(著作権法95条の2)
⑩貸与権(著作権法95条の3)

なお、声優の藤田咲さんは初音ミクの声の素材データを提供したのみであり、「演劇的に歌う」(2条3項1号)の要件を満たしません。よって実演に該当しないために藤田咲さんは実演家ではないと判断されます。

◆初音ミクが既成曲を歌った場合、誰の権利を侵害することになるのか?侵害の主体は誰なのか?

著作権法22条に規定されている上演権又は演奏権を侵害すると判断します。ここで上演とは歌唱を含む概念です。すなわち、当該既成曲の作詞家および作曲家の権利侵害となります。侵害の主体は実演家で、すなわち初音ミクに既成曲を打ち込んだ者となると解されます。権原なく実演をおこなった為です。

もちろん、オリジナル曲を作成して初音ミクに歌わせた者は、その者が作詞家・作曲家かつ実演家となり、上演権と演奏権と実演家の権利を有しますので、第三者の権利侵害を構成しません。

第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

◆法改正の予言
将来的には、著作権法2条1項3号は以下の下線部が追加される事になると判断します。平成14年度の特許法等の法改正で、プログラム等が物に含まれることになったのと趣旨が似ているように思いました。

著作権法

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するもの、若しくは歌唱合成装置による歌唱を入力する行為を含む)をいう。

余談ですが、「初音ミク・・・恐ろしい娘」という言葉を見て、ガラスの仮面の月影先生の台詞を思い出してしまいました。このキャッチコピーはアキバの店のPOPにも描かれていたそうです。

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コメント

釈迦に説法の愚行ですが
http://blogs.itmedia.co.jp/closebox/2007/11/post_47eb.html
これはどうなんでしょうか?

投稿: hidon | 2007年11月 4日 (日) 20時35分

はじめまして hidon さん。サイトの紹介ありがとうございます。
偶然にも、ご紹介いただいたときと前後して、自分はそのサイトを拝見いたしました。

著作権というものを扱う現場では悩む問題なのだと思います。いままでは「バーチャルシンガーによる歌唱」なんてものは存在しなかったので、機械音声ならば「シンセサイザー等の楽器」と判断して処理すれば良かったのですが、これからはその判断基準が崩れてしまうのです。

本件に関してはコメント欄だけでは書ききれませんので、新たに「初音ミクと著作権について・その2」の記事を書きたいとおもいます。

投稿: 和泉聡 | 2007年11月 5日 (月) 23時16分

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Q:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲 [続きを読む]

受信: 2007年11月 3日 (土) 11時30分

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