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初音ミクと著作権について #2

 先日、当該ブログに書いた「初音ミクと著作権について」の追記です。
 松尾公也さんのブログに「初音ミクが問いかける、楽器と歌手の境界線」で、幾つかの問題を提起されています。初音ミクを用いた音楽は「歌唱」なのか否か、「歌唱」と判断するならば、どの程度の「歌声度」ならば「歌唱」と判断し、それ以外を「楽器」と判断するのかという点です。
 現実に松尾さんが初音ミクに歌わせた歌はMySoundユーザースペースに公開申請しても手続きに手間取っているようで、MySoundユーザースペース運営元のYAMAHAと著作権申請先のJASRACの両者で喧々諤々と議論されているのではないかと想像します。
 以下に自分の意見を述べます。

◆初音ミクを用いた音楽は歌唱なのか否か?

 著作権法、及びJASRACの使用料規定には歌唱は定義されていません。大辞林 第二版 (三省堂)には以下のように定義されています。

かしょう ―しやう 【歌唱】

(名)スル

歌をうたうこと。また、歌。
「―の指導」「―力」

 この定義に歌唱の主体は明示されていませんが、暗黙のうちに自然人が想定されていると解されます。よって、VOCALOID2 Editor がWAVファイルを出力することは歌唱には該当しません。主体が自然人ではないからです。
 しかし、初音ミクを用いた音楽の固定物は「歌唱の固定物」と判断します。その理由は、VOCALOID Editor 入力者が、その歌唱の固定物を得たいという意思のもとに入力をおこなっている事によります。これは、結果の発生を認識しながらそれを容認して行為するという心理状態に該当し、民法上の故意と判断されます。(故意-Wikipedia より) また、客観的に、その歌詞及び音階で聞き取れる場合には、原歌詞の歌唱の固定物を故意に作成したと主張することは容易とおもいます。

 しかし、これにはやはり疑義あると思います。実際には歌詞通りにVOCALOID Editor に打ち込むことはなく、発音を自然にjする為、多少のアレンジを加えるからです。例えば、「はつめい」を「はつめー」「とっきょ」を「と<無発音>きょ」等とアレンジすることがこれに該当します。このようなアレンジを加えていって、原曲の歌詞と相違する歌唱をVOCALOID Editor で入力した場合にはどう判断すべきかは極めて微妙と思います。

 また、松尾さんの例では、初音ミクに適当なハミング、『タララララー』とか『ファファファファファ~』などで歌わせて公開申請したそうです。JASRAC がどう判断するのか興味深いです。自分は、この初音ミクのハミングは歌唱ではあるが原作詞家の上演権(著作権法22条)の権利範囲には入らず、作曲家の演奏権(著作権法22条)の権利範囲のみに入ると判断します。

◆どの程度の「歌声度」ならば「歌唱」と判断し、それ以外を「楽器」と判断するのか?
 著作権法上、歌唱と楽器は定義されておらず、法上の判断基準はありません。寡聞にして判例や通説も知りません。よって判断基準は不明です。
 あえて基準を想定するならば、以下のようなものが考えられます。

①一部の視聴者が楽曲中に歌詞を聞き取れたならば、歌唱と判断する。
②大部分の視聴者が楽曲中に歌詞を明確に聞き取れたならば、歌唱と判断する。
③一部の視聴者がブラインドテストで人間の歌唱と区別つかなかったならば歌唱と判断する。
④大部分の視聴者がブラインドテストで人間の歌唱と区別つかなかったならば歌唱と判断する。

 ①と②の判断基準は、著作権法2条1項3号の実演の要件「演劇的に歌い」の要件を満たさないと解され、これが基準となるとは思えません。よって、③または④が基準となると思われ、自分としては④が要件となると予想しています。
 どの歌唱合成装置を用いたかは本質的ではありませんが、PC-6001やPLG100-SGなどの音声合成の品質は③又は④の要件を満たすとは思えません。実務的には YAMAHA の VOCALOIDシリーズまたはそれと同等以上の音声品質を具備した製品に限定されると思います。

余談ですが、上記判断基準はチューリングテストに似ていると思ってしまいました。

チューリング・テスト (Turing test) とは、アラン・チューリングによって考案された、ある機械が知的かどうか(人工知能であるかどうか)を判定するためのテスト。チューリングテストを機械が意識しているか、機械が理解しているかの基準とする考えもある。

Wikipedia より

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コメント

何が問題なのか理解に苦しみます.「初音ミク」は単なる音源で市場にいくつもあるサンプリングシンセサイザーの一つに過ぎないと思っています.偶々,人の声に聞こえても単なる楽器です.また,著作権云々で言えば,著作権の対象は人であり,人以外の物は保護されません.インコが人の歌声で楽曲を歌っても保護の対象になりません.又,人にも制限があります.良い例では無いですが,北朝鮮の著作(楽曲)は日本では著作権の保護対象にはなりません.最終的には司法の判断(JASRACの判断ではありません)が必要ですが,サンプリングシンセでの演奏と何等差は無いと考えています.

投稿: | 2007年12月 2日 (日) 15時44分

実際にさまざまな権利処理関係の仕事関わっている者としては、初音ミクの歌について、どのような判断で、どういう着地点になるか非常に興味あります。なにぶん権利関係はグレーな領域が多すぎて、判断ができないこともいっぱいありますし(^^;
個人的には、歌としての創作意図を持って作ったものに対しては「歌」である、という着地点になりそうな気がします。

投稿: | 2007年12月 3日 (月) 00時57分

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