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職務発明@○ーニング

職務発明のレジュメを回していると、数年前に読んだマンガのことを思い出してしましました。あらすじを以下に記載します。

主人公の甲さんはX会社の社員です。甲さんの異動先で、輝かしい開発実績により昇進した乙部長と、乙部長の同期でありながら閑職にいる丙さんと知り合います。
甲さんが丙さんの自宅に行って見ると、自費で最新の研究設備を揃えて高度な開発を行っているのを目撃します。過去に開発部にいたので、その延長として半ば趣味で開発しているそうです。
そして、甲さんは社内文書等から、乙部長の開発実績とされていたものが、実はすべて丙さんの手によるものであり、乙部長はその実績を横取りしていたことを知り愕然とします。乙部長は実はそのような腹黒い人間だったのか・・・甲さんはショックを受けます。
その後、乙部長の担当する新製品αについて、他人の特許権Aの発明の技術的範囲に入るため実施できないことが判り、社内が騒然となります。その特許権Aの特許権者とは、他ならぬ丙さんだったのです。

乙部長 「この特許が丙のものだったら、会社に権利はないのか?」

知財部員丁 「駄目です! 特許権Aの出願時には丙さんは既に開発職ではなく、しかも自宅の実験設備を使って業務時間外に開発したものだそうです。」(つづく)

さて、このマンガのストーリーですが、受験生の方は職務発明に係わる設定がデタラメなのがお分かりですね。職務発明とは以下の3要件を有するものを言います。

1、従業者等の発明であること。(35条1項)
丙さんはX会社の従業者であるため、この要件を満たします。
2、その性質上、当該使用者等の業務範囲に属する発明であること。(35条1項)
X会社は新製品αを発売しようとしており、特許権Aの発明の技術範囲(70条)に属する発明であるために、この要件を満たします。
3、その使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明であること。(35条1項)
丙さんは過去に開発部にいました。そして今でも趣味で同じように過去の職務に属する開発を行い、その結果として特許権Aを出願していますので、この要件も満たすと解されます。なおかつ業務時間外に自宅の実験設備で発明したことも、職務発明でないという抗弁理由にはなりません。使用者等と従業者等の利益調整のためです。

よって、特許権Aに係わる発明は職務発明(35条1項)であり、X会社は無償の通常実施権を有します。よって新製品αの製造販売は丙さんの特許権Aの侵害にはなりません。

また、勤務契約や勤務規則等に予約承継が規定されていたならば、X会社は特許権Aを承継することが可能です。このときも新製品αを製造販売する権原を有します。(35条3項)但し、丙さんに相当の対価の支払いを要します。従業者等と使用者等の公平の観点からです。

さて、このマンガの結末をご紹介します。

新製品αは発売できないのか・・・、蒼白となった乙部長の前に丙さんが現れて言います。

丙 「特許権Aを使えよ。オレはお前の元で好きなだけ開発に打ち込むことができて、本当に感謝しているんだ」

丙さんの手をにぎって涙ぐむ乙部長・・・・

(HAPPY END)

乙部長の前に丙さんが現れて「使えよ」と言った時点で、78条の許諾による通常実施権が発生し、新製品αは無事に製造販売できることになりました。これが「いい話」になるためには、特許権Aが職務発明でないことが要件となります。

自分がこのマンガの設定についてコンサルタントを受けたならば、乙さんは子会社に飛ばされて運転手(お約束)の業務に携わっていることにします。子会社とはいえ別の法人であり、よって特許権Aに係わる発明はX会社の退職後の発明に該当し、よって職務発明(35条)には該当しないと解されます。これで全てのストーリーが誤りなく繋がることになります。

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